児童養護施設の現状

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児童養護施設は、貧困、虐待、親の病気など、さまざまな家庭の事情により家族と暮らせない子どもたちが生活する児童福祉施設です。全国に約570あり、1歳から18歳まで約3万人の子どもたちが暮らしています。

児童養護施設にやってくる子どもは、その53%が虐待を受けており、その数は増加しています。最も多い入所理由は、ネグレクト(育児放棄)で、身体的、心理的、性的な虐待が続きます。心に深い傷を負ってやってくる子どもたちには、ひとりひとりの子どもに時間をかけて寄り添うことが必要となります。

虐待を受けた子どもたちは、「努力すること」「基本的生活習慣を持つこと」が難しいといわれています。

◆努力すること
日本は、努力をすれば報われる社会です。確かにそうですが、虐待を受けた子どもにとって、努力をすることは困難を伴います。人が努力をするためには、愛された経験と報われた経験が必要だからです。
 まず、生まれてから数年間、人生で最も愛情を受ける時期に、"愛された"という経験を積むことで、この世に対する肯定感が生まれます。赤ちゃんはよく泣きますが、泣く度に自分を愛する親が来てくれて、自分を助けてくれるという原体験は、その子どもに、この世の中に対する肯定感を持たせるといいます。そして、社会の常識等を学ぶしつけという時期に、大好きな親に褒められる為に、自分の欲求を我慢するという最初の課題を乗り越えて、"頑張れば報われる"という経験を積みます。

 しかし、虐待というものは、子どもに対して、全く逆の経験をもたらします。そのため、世界に対する肯定感や、頑張れば報われるという価値観が子どもの中に育まれず、「頑張っていいことがあるの?これまではいいことがなかったのに。」という気持ちを持つ子どもが多くなってしまう、と言われています。

◆基本的生活習慣を持つこと
 虐待という極限状態を過ごした子どもは、何とかその環境を生き抜くために、一般の家庭や社会で過ごす為には、必要のないことも、身につけてしまうことがあります。例えば、身体的虐待のある家庭に育った子どもが、人を暴力で支配しても構わないという考えを持ってしまうこと等があげられます。不適切な教育を受けた為に、社会のルールや常識が身に付かないまま年を重ねてしまい、それが引き金となるトラブルを学校などで引き起こし、周りとトラブルを起こしがちになることもあります。
 その結果、周りへの不信感や疎外感を増幅させてしまい、幼児期に十分に得ることが出来なかった"愛された経験"や"報われる経験"を、成長を重ねても得ることが出来ないという悪循環に陥ってしまうこともあります。

子どもたちが暮らす環境
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全国の児童養護施設に住む子どもたちのうち、68%は大舎と呼ばれる大きな一つの建物に、定員20人以上、平均では42人での共同生活という形態で暮らしています。寮のような集団生活で、食事やお風呂など、毎日決められた時間に決められたことをやる必要があります。また、子どもたちのプライバシーの問題もあります。
そのような生活の中で、子どもたち一人一人の状況に合わせたケアをすることは難しい場合があります。

現在、できる限り家庭的な環境の中で、児童指導員との個別的な関係を重視したきめ細かなケアができるように、6人の小規模グループケア(小舎制に含まれる)や、既存の住宅を活用するグループホームが推進されています。

児童養護施設では、子ども達と生活をともにし、心のケアを担う児童指導員の人数が慢性的に足りないという状況があります。
子どもに対する児童指導員の比率は、基本的に国の定めた配置基準で決まっており、3歳未満児で2人につき1人、3歳から小学校入学前までで4人につき1人、小学生以上では5.5人に1人と定められています。
この基準をもとに、1日8時間の勤務でシフトを組むと、一人で担当する子どもの数が最大16.5人になる場合もあります。実際の勤務では、施設の定員に対して子どもの数が8割程度となり、13人程度の子どものグループに対して3人の児童指導員で担当するといったことが多いようです。一度に面倒を見る子どもの数が多いことに加え、規則的な一日8時間の勤務ではなく、3回の勤務の内、一度は宿直を担当する不規則な生活となり、体力的な負担は大きなものとなります。

児童指導員の方の多くは熱意があり、一人一人の子どもたちに寄り添ってケアを行っていますが、物理的な制約で、十分なケアが難しい状況が起きています。

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仕事の厳しさや、子どもたちのケアを十分に出来ないというストレスもあるのか、児童養護施設の直接ケア職員(児童指導員、保育士と個別対応職員)の平均勤続年数は8年と、決して長くありません。(平成19年度 社会的用語に関する実態調査中間報告書より)職員は、家庭の事情、新たなキャリアの選択など、さまざまな事情で辞めていくのですが、バーンナウト(燃え尽き症候群)が理由の場合も少なくありません。


施設を退所した子ども達にとって、施設は自分の育った家のようなものであり、そして、そこで自分のケアをした職員は親のようなものであると、職員の方から話を聞きます。
結婚や出産等、人生の節目で施設を訪れ、お世話になった職員に近況報告をする退所者も多いとのことですが、そのときには既に、職員が施設を去ってしまっていることも多いようです。

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