認定NPO Living in Peace代表の慎泰俊が今会いたい人と、これからの働き方・子どもの未来について語ります
第5回
2014年6月18日(水)
サヘル・ローズさん × Living in Peace 代表 慎泰俊
【後編】自分に「できること」をやる 「できること」に大きいも小さいもないと信じて
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慎泰俊がいまお話ししたい人をお招きする対談企画『働きながら、社会を変える。』の第5回には、女優のサヘル・ローズさんをお迎えしました。

サヘルさんは、ご自身の生い立ちから、日本の児童養護施設支援にも積極的に取り組んでおられ、私たち、Living in Peace 教育プロジェクトが支援する筑波愛児園に訪問され、また実際に園の子どもたちとも交流されています。

今回は、社会的養護や教育のあり方について慎泰俊と意見を交換しながら、サヘルさんが日本・イランで将来どのような活動をしていかれたいかを伺いました。ぜひご一読ください。
(企画・構成:Living in Peace 教育プロジェクト)
子どもたち1人1人の夢を応援するのが大人の役割
サヘル・ローズさん
1985年、イラン生まれ。イラン・イラク戦争で両親と兄弟を亡くし、ほどなく孤児院に入る。その後、彼女を養子として迎えた女性とともに日本に移住。楽な暮らしではないながら、心ある日本の人々にも助けられ、夢を実現させるべく芸能界に。現在は、女優として活動するなか、自身の経験をこれからの社会に生かす道を模索している。

サヘルさん(以下敬称略):
私はイランに自分の施設をつくるのが目標なんです。そのとき特に大切だなと思っているのは、施設にいるときの教育ですね。ただ学校に行っているだけでは、子どもたちのの未来はなかなか築けないでしょうから。やっぱり一人ひとりの個性があるし、一人ひとり夢があるから、個性を伸ばして、夢を応援してあげることが大人の役割だと思っています。高校を卒業しただけでは、大学の学費も払えず、夢を諦めてしまう子もたくさんいると思うんですよね。だから、子どもたちが本当の意味で社会のなかで自立できるような教育の部分に、もっと力を注いであげるべきだと思います。
僕もそう思います。
サヘル
現状では、子どもたちのやりたいことを十分に応援できてないと思うんですよね。施設で暮らすことで、暴力のない安全な環境は用意されますが、夢を諦めず、本当に自立していくために必要なものが全部そろっているかというと、おそらくその半分も満たされてないんじゃないかと思います。
なるほど。
サヘル
私が重視したいのは、小学校に上がる前の教育なんです。小学校に入学する時点で、人それぞれ教育レベルはバラバラだし、すぐになじむ子もいればなじめない子もいます。そこで、子どもたちが「学校」というひとつの社会に入っていく前に、人間的な教育をしてあげられるスペースをつくりたいんです。たとえ6才の子どもでも、人とのつながりや、自分のいる状況はちゃんと理解できますから。

そうですか。それは、イランで行われているのでしょうか?
サヘル
はい、そうなんです。
素晴らしいですね。
サヘル
それでも大変です。イランでは国の大々的なコマーシャルや政策の結果として、里親に対する理解は一般的にあるし、里親が施設の子と休みの日に出かけたり、プレゼントをあげたり、という交流の場は多いんです。だけど、それでも施設の中の人たちにとっては、「外部の人が」という感じがあるんです。いくら私が施設出身でも、もうそこを出た身ですから、施設に近づきにくい感じがあって、それがちょっと難しいところです。
なるほど。日本と同じことが、イランでもやっぱりあるんですね。日本も一部の例外を除いて、卒園生も含め園外の人が来ることを、児童擁護施設は基本的に断っていますね。
サヘル
そうなんですよね。
あれって、子どもを守るという名目でされているんですけれど。
サヘル
うーん、違うと思う。
そうですよね。
サヘル
けっこうシビアな世界です、本当に。活動していて思いますが、すごく大変です。
慎 泰俊 Taejun Shin
1981年東京生まれ。
朝鮮大学政治経済学部法律学科卒、早稲田大学ファイナンス研究科修了。モルガン・スタンレー・キャピタルを経て、現在はPEファンドの投資プロフェッショナルとして様々な事業の分析・投資実行・投資先の経営に関与。
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