認定NPO Living in Peace代表の慎泰俊が今会いたい人と、これからの働き方・子どもの未来について語ります
第5回
2014年6月18日(水)
サヘル・ローズさん × Living in Peace 代表 慎泰俊
【後編】自分に「できること」をやる 「できること」に大きいも小さいもないと信じて
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子どもは大人をよく見ている、教育に必要な人間力
サヘル
あと、よく行き届いている施設とそうでない施設の差もありますよね。これはなにで決まるんでしょう?

慎泰俊
まずは、リーダーですね。もちろん施設の資金も大きな要素ですが、施設の創設者がまだ存命だったり、想いの強い施設長がいらしたりすると、子どもたちはしっかり育つんです。だから、そういうリーダーがいるかどうかの違いは大きいんだなという気がしています。
サヘル
では職員の育成も必要ですね。
必要だと思います。とくに子どもは、その人が信用できるかどうかを、よく見てるんですよ。以前に施設出身者の子たちと話していて気づいたのですが、「この先生は仕事でやってる」「この先生は真面目に私たちのことを想ってる」といった違いを、ちゃんと見分けてるんです。

対談中の慎泰俊とサヘルさん
サヘル
うん、うん、たしかに。
「仕事でやってる」先生の言うことは一切聞かないし、そういう関係性しか成立してない状況では子どもも変われませんよね。施設には、親から虐待を受けてきた子たちが多いので、そもそも人間を信用できないと思っていたりするのですが、その世界観を壊すには、世の中にはいい人がいるんだってことをわかってもらう必要があって、それは施設の職員さんがやるべき仕事です。そして、職員さんたちが仕事やお金のためにやっているのではなくて、その子たちのためにやっているんだというのを見せてこそ、子どもは変わると思うんですよね。そういう人間力を持っている人が増えたら、ずいぶん変わっていくと思います。ただ、その人間力をどうすれば鍛えられるのかは・・・、よく分からないんですけど。
サヘル
今おっしゃったように、子どもってたしかに色々見ているんだけども、心が満たされないまま成長すると、心が子どものままで残ってしまうことも多いんですよ。母からの愛情を受けた私でも、施設のなかで暮らしたときの感覚がどこかにあって、まだ成長しきれないんです。今の方が歳を重ねているし、これだけ平和な場所に来ているのに。とくに、施設にいる子の年齢はバラバラで、年上の子たちは自分よりも年下の子の面倒を見ようと、頑張って背伸びしていたりするんですが、すると、大人になったときに二つの自分がいることに気付くんです。まだ施設のなかにいる自分と、施設から出てきた自分が。それがうまくマッチしてないときもあるので、結構複雑なんです。
そうであればいっそう、モノよりも人が重要で、さらに人の中身が重要になりますね。しかしこれはやっぱり難しいことで、ごく一般的な家庭内の教育でさえ、すべての子どもを良くできるわけではないですからね。
サヘル
本当にそうですね。
慎 泰俊 Taejun Shin
1981年東京生まれ。
朝鮮大学政治経済学部法律学科卒、早稲田大学ファイナンス研究科修了。モルガン・スタンレー・キャピタルを経て、現在はPEファンドの投資プロフェッショナルとして様々な事業の分析・投資実行・投資先の経営に関与。

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