認定NPO Living in Peace代表の慎泰俊が今会いたい人と、これからの働き方・子どもの未来について語ります
第5回
2014年6月18日(水)
サヘル・ローズさん × Living in Peace 代表 慎泰俊
【後編】自分に「できること」をやる 「できること」に大きいも小さいもないと信じて
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ドラマ『明日、ママがいない』に寄せられた両極端の反応
ところで、『明日、ママがいない」』というドラマは、ご覧になりましたか?
サヘル
はい。正直、すごく嫌でした。ああいう呼び名で呼び合うことはないですから※、ちゃんと調査したのかな、ちゃんと考えて発信したのかなって思いましたし、最終的に何を伝えたかったのかよく分かりませんでした。だから、あのドラマを見て「施設のことがよく分かりました」とか言われてしまうと・・・。慎さんは、どう思われましたか?
※「明日、ママがいない」で、赤ちゃんポストに預けられた経緯を持つ子どもが「ポスト」というあだ名で呼ばれていた。また、違う最終回に施設長に子どもが引き取られることになった。

対談中のサヘルさん
まず、現実との乖離はすごくあると思います。一番最初から考えられないことばかりだったので、一つ一つ、「これは違うな」と思うことは多かったです。ですが、「私たちは里親を選べないんだ」とか、「私なんか引き取ってくれる人はもう誰もいないんだ」とかの、子どもたちの思いを部分的に切り取ると、きっと現実にもあるだろうなと思うところもありました。これは興味深いことですが、実は日本の施設出身者で、あのドラマを見て、「よく言ってくれた」っていう人と、「ふざけるな」っていう人とが、半々なんですよね。
サヘル
その違いは何でしょう。

慎泰俊
はい、施設を運営する側からは、100%、ふざけるな、大変不愉快である、というものでしたが、子どもたちの場合は、意見が半々なんです。そしてそれはく、日本の施設の現状、つまり自分たちが十分なケアが受けられなかったという現状に対し、子どもたちが持つ怒りなのかなと思ったりするんです。スカッとしたっていってくれた子も結構いたんです。
サヘル
そうなんですね。
でも、総合的にはやはりどうかと思います。関心を持つ人が増えたのはいいかもしれないですが、誰かが嫌な気持ちになることを犠牲にして関心が増えるということはあっていいものじゃないと思いますから、やっぱりああいうドラマはなくてよかったろうと僕は思っています。
サヘル
たしかに。
ただ、子どもと施設職員の反応の差が、今回は顕著でした。このドラマを通じて、施設の先生方が子どもたちにやってあげられていると思っていることと、子どもたちがやってもらっていると思っていることのギャップやすれ違いが相当大きいということが、浮かび上がってきたのではないかと思いました。
慎 泰俊 Taejun Shin
1981年東京生まれ。
朝鮮大学政治経済学部法律学科卒、早稲田大学ファイナンス研究科修了。モルガン・スタンレー・キャピタルを経て、現在はPEファンドの投資プロフェッショナルとして様々な事業の分析・投資実行・投資先の経営に関与。

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