認定NPO Living in Peace代表の慎泰俊が今会いたい人と、これからの働き方・子どもの未来について語ります
第6回
2014年8月23日(土)
ヒューマン・ライツ・ウォッチ 日本代表 土井香苗さん × Living in Peace 代表 慎泰俊
【前編】日本の社会的養護の仕組みは、国際的には「人権問題」
「すべての子どもが夢を持てる日本」へ
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慎泰俊がいまお話ししたい人をお招きする対談企画『働きながら、社会を変える。』の第6回には、ヒューマン・ライツ・ウォッチ(以下、HRW)日本代表の土井香苗さんをお迎えしました。

土井さんは、慎と長く親交があり、過去にはLiving in Peaceが支援する児童養護施設を訪問下さったり、また法律家のお立場からアドバイスを下さったこともあります。

HRWは、2014年5月に、『夢がもてない―日本における社会的養護下の子どもたち―』(http://www.hrw.org/node/125013)という報告書を出されました。そのなかでは日本の社会的養護の仕組みや手続きを、人権問題の観点から検証されています。今回は土井さんに、その報告書の内容や作成プロセスでのご苦労などを伺いました。ぜひご一読ください。
(企画・構成:Living in Peace 教育プロジェクト)
日本の社会的養護の仕組みは、国際的には「人権問題」
ヒューマン・ライツ・ウォッチ 日本代表
土井香苗さん
1975年、神奈川県出身。東京大学法学部卒業後、2000年から弁護士として活動。
2006年にはニューヨーク大学ロースクールで法学修士号を獲得。
現在は国際NGO ヒューマン・ライツ・ウォッチの日本代表をつとめている。
慎 
今日はありがとうございます。
土井さん(以下敬称略):
よろしくお願いします。
慎 
先日、HRWは日本の社会的養護についてのレポートを出されましたので、今日は改めてそのことについてお伺いしたいと思っています。まず早速ですが、そもそもなぜ、「社会的養護」について書かれようと思ったのですか。
土井
以前から国連の子どもの権利委員会が勧告していましたので、日本国内の社会的養護の仕組みが国際的に対処すべき人権問題の一つだという基本的認識はありました※。しかし、3.11の後に震災孤児が人権を侵害されていないか調査をしたことが、大きなきっかけになりました。実際に調査に行ったら、そこは地縁も血縁もあるところでしたから、子どもたちは地域のセイフティーネットに救われていて、また政府もある程度の政策的対応をしていたんです。ですから、震災孤児がひどい状況にあれば震災孤児についてレポートを書こうと当初は思っていたのですが、結果的には問題意識はそのままに他の社会的養護の子どもたちの置かれた状況を中心としたレポートになった、ということなんです。
慎 
レポート作成にあたり、数百人に聞き込みされたと書いてありましたね。施設は何か所を訪問されたのですか?
土井
10県ほどをまわりさまざまな施設や里親を回りました。東北から、関東、大阪、九州にいたるまで、いろいろですね。
慎 
そのときに地域差は感じられましたか?
土井
やはり差はあったと思います。一般的に言って、関西や東北と比べると東京は良いと感じましたね。
慎 
地方に行くと、「ドンッ」といような大規模施設がすごく多いですからね。
土井
「どうせ子どもを捨てるなら東京で捨ててくれ」と、ある地方の施設の方がおっしゃったとも聞きました…。
※家庭において適切な養育を受けることができない子どもを、社会が育てる仕組みを「社会的養護」と呼びます。国連の子どもの権利委員会は、子どもの委託先として、養子縁組や里親を優先し、施設養護は最終手段としていますが、日本では施設養護が大部分を占め、児童相談所の子どもの措置の85%が児童養護施設です。
慎 泰俊 Taejun Shin
1981年東京生まれ。
朝鮮大学政治経済学部法律学科卒、早稲田大学ファイナンス研究科修了。モルガン・スタンレー・キャピタルを経て、現在はPEファンドの投資プロフェッショナルとして様々な事業の分析・投資実行・投資先の経営に関与。
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