【後編】愛情の基礎は「みんなちがって、みんないい」 自分を愛せる人が増えればもっと生きやすい社会になる
児童養護施設の子どもの支援に取り組む慎から、乙武さんが教育者として考えておられる「子どもの教育」のこと、2人のお子さんの父親として実践しておられる「子育て」のことまで、たっぷりと伺いました。子どもだけでなく、人への「寛容さ」「優しさ」「誠実さ」に溢れる乙武さんのお話を、ぜひご一読ください。
大学卒業後はスポーツライターとして活動。2005年4月から、東京都新宿区教育委員会の非常勤職員「子どもの生き方パートナー」として教育活動を開始。2007年2月に小学校教諭2種免許状を取得、同年4月から3年間、杉並区立杉並第四小学校教諭として勤務。2013年2月に東京都教育委員に就任。主な著書に、『五体不満足』『だいじょうぶ3組』(ともに講談社)など。2児の父。
慎 :乙武さんご自身は、今お子さん2人いらっしゃいますよね。責任感の強い長男の子と、まだ暴れん坊なのかな(笑)・・・次男の子に対して、どのような親であり続けようと思われますか。
乙武さん:僕は障がいがあるので、父親として物理的にしてやれることが圧倒的に少ないんです。オムツを替えてあげたり、お風呂に入れてあげたりということが何一つできなかった。これは最初、僕にとって本当につらいことでした。果たしてこれで父親と呼べるんだろうかという、ジレンマがすごくあったんです。
(以下、敬称略)
慎 :はい。
乙武 :でも、それを決定的に救ってくれたのが息子自身でした。息子は1歳半を過ぎた頃から、僕の手伝いをいろいろしてくれるようになったんです。例えば僕がトイレに行くときにパンツを脱がせるとか、僕が電動シェーバーでひげを剃るのを手伝うとか。そういういろんなことを1歳半の子どもがやるようになったのを見て、すごいことだなと思いました。教えても、頼んでもいないのに、これは何なんだと。
慎 :そうですね。
乙武 :子育てや教育って、子どもに対して「何をしたか」ということが注目されがちだけど、本質はそこではなく、結果的に子どもが「何を学んだか」「どう育ったか」ということなんじゃないかと思ったんです。そう考えると、僕はしてあげられることは少ないけれど、親父がこういう体だからこそ息子が学べた、できるようになったことがあるなら、これはこれで僕の子育てとしてアリなんじゃないかと思ったんです。
慎 :どう育ったかが大事、確かにそうですね。
朝鮮大学政治経済学部法律学科卒、早稲田大学ファイナンス研究科修了。モルガン・スタンレー・キャピタルを経て、現在はPEファンドの投資プロフェッショナルとして様々な事業の分析・投資実行・投資先の経営に関与。