認定NPO Living in Peace代表の慎泰俊が今会いたい人と、これからの働き方・子どもの未来について語ります
第6回
2014年9月9日(火)
ヒューマン・ライツ・ウォッチ 日本代表 土井香苗さん × Living in Peace 代表 慎泰俊
【後編】「やれることしかやらない」は「なにもやらない」と同じ
そんな「不正義がまかり通っている」ことが腹立たしい
このエントリーをはてなブックマークに追加
LINEで送る

日本の子どもの人権への活動は始まったばかり
慎 
今後どういうことをされるかは決まっているんですか。この分野(=子どもの社会的養護)以外で。
土井
この分野以外で?
慎 
あ、では2つ聞かせて下さい。この分野とそれ以外の分野で。
土井
この分野における私達の活動は本当に始まったばかりです。調査の段階は終わったとはいえ、今度はアドボカシーのフェーズに移っていて、それは始まったばっかり。なにせ社会的養護の現状は戦後直後か!!ってほど本当に悲惨なので改革がたくさん必要で約10ページにわたって改革提案がされています・・・、「何とか少しでも実現しなくては」みたいな(笑)。レポートの中には「主な提言」というのが1ページであるんですけど、せめてそれくらいは、と思っています。でも、やることは明らかなんです。先ほどの民主主義ルールに則って、まず世論を作るためにメディアにアクセスしつつ、NGO間で協力をお願いするという横展開をして、それをベースに、国会や県知事といった政策立案者に提言する、ということひたすら繰り返す、ということに尽きます。それを何とか、頑張るという感じですね。
慎 
三重県知事の鈴木英敬さんは、この問題に強い関心をお持ちですよね。以前G1サミット※でお話ししたときに、すごく真剣に考えていらっしゃるんだな、って。
土井
そうなんだ、それは素晴らしい。本当に偶然ですが、私、今日これから鈴木さんにお会いするんです。そこで鈴木さんに、もちろん全体的な提言もするけど、鈴木知事は実務者なので、「さてどこから始めますか」という話をしようと思っています。まずは乳児院の赤ちゃんを家庭に移すという提案です。調べてみると三重県には乳児院があったのですが、定員35人の小さな施設です。たった35人の赤ちゃんをどうするか、ということは、鈴木さんみたいなトップがしっかりコミットすればできることだと思うので、彼もそう考えてくれるといいなと思っています。そういう第一歩はこれ、第二歩はこれ、最終段階はこれ、というように現実なロードマップを提言したいんです。三重県がもし頑張ってモデル県になってくれれば、それは他の県にとってすごく良いことだと思いますから、期待しています。

インタビューアーの慎泰俊と

慎 
他の分野に関してはどうですか。
土井
日本に関して、ですよね。選択肢は色々あるのですが、ただ今回のレポートも、調査に2年かかり、さらにその2年のプロジェクトのための資金集めや人材集めがありましたから、結局、構想からは3年がかり。そういう意味では気軽にたくさんは出来ないということがあります。なので、次ももちろんやりたいのですが、やはり良いイシューを選びたいなと思っています。その点、私はもともと難民問題や外国人問題という領域を扱ってきたので、いつもそれらは気になっています。とくに今度オリンピックが2020年に東京でありますよね。それに向けて短期雇用の労働者とか家政婦さんとかを入れるとか、そういう案も出てきています。外国人が日本に入っていることは私個人としてはむしろ賛成なんですけど、そのときに外国人の人権保護という観点が忘れられています。このままでは「必要だから来てもらったけど、もう必要なくなったから帰って」となるなど、きっと問題が起きてしまう、ということが気がかりです。でも、実際問題として、また調査から始めると、小さなNGOである我々の少ない労働力が取られてしまうので・・・、あと最低1年くらいはこのアドボカシーに注力したいと考えています。ですから今は、少なくとも1~2年後になるだろう次のリサーチ・プロジェクトに向けて、みなさまからの色々なアイデアをお待ちしたいと思います。
慎 
そうですか。よくわかりました。本日はお忙しい中ありがとうございました。
※G1サミット:今後の日本・世界を担っていくリーダーたちが学び、交流する場を提供する「日本版ダボス会議」。参加者がこのサミットを通して、日本や世界の政治・経済・文化・技術・環境などを大いに学び、交わり、語り合い、各界で将来リーダーシップを発揮するときの知恵やネットワーク基盤を提供する。

特定非営利活動法人Living in Peace(理事長:慎泰俊)は、
児童養護施設に暮らす子どもたちの養育環境の改善や進路支援を行っています。
http://www.living-in-peace.org/chancemaker/

慎 泰俊 Taejun Shin
1981年東京生まれ。
朝鮮大学政治経済学部法律学科卒、早稲田大学ファイナンス研究科修了。モルガン・スタンレー・キャピタルを経て、現在はPEファンドの投資プロフェッショナルとして様々な事業の分析・投資実行・投資先の経営に関与。

記事一覧