認定NPO Living in Peace代表の慎泰俊が今会いたい人と、これからの働き方・子どもの未来について語ります
第1回
2013年7月20日(土)
Teach For Japan代表 松田 悠介 × Living in Peace 代表 慎泰俊
【前編】日本人にはもっと自信が必要 人の成長の源は”自己肯定感”
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自尊感情はクリエイビティにも関係する
松田 :はい。教育の水準を考えるときに、何をもって教育の質と定義するかがすごく重要なところだと思っていて、今「日本の教育は質が高いよね」って言われている部分は、限りなく「20世紀型の教育」なんだろうと思います。それは記憶力や計算など基礎的なところですね。で、アメリカの場合は計算っていうと、もう中学校のうちから電卓を使うんですね。実際の計算は機械に任せて、どちらかというとその計算に組み込む変数であったり、それをどう使っていくのかというところに重点を置いていこうっていう教育ですよね。
慎  :重点が違うわけですね。
松田 :なので、日本はそういった意味では、20世紀の社会においては限りなく高品質な教育があった。高度経済成長の時の社会に求められた人材というのは、ベルトコンベアの前で高品質にたくさん製品を造り出す人材が求められていて、戦後間もない何もなかった日本がその産業をグーッと伸ばしていったのは、それを忠実にできる人がいた、もっと言えば教育からそういった人材が輩出されていたからです。右向け右の教育であったり、これをいついつまでに暗記しなさいという、暗記偏重型・偏差値重視の教育です。
慎  :それが、21世紀ではどうなりますかね?
松田 :もうみなさんご存知のとおり社会というのは変わっていて、たとえば国内の労働人口であってもどんどん海外の人材を活用する動きがある中で、グローバル人材を育ててかなければいけない。これは別にトップ5%のことだけではなくて、全ての人たちについて必要なことだと思います。
慎  :21世紀型の教育ということでいうと、創造性とかも入ってくると思うんですけど、創造性というのは自己肯定感とリンクしていますか?
松田 :そうですね。やっぱりこう、ディスカッション能力や自分の考えを発信する力なんかも、自分の発言に対する自信や、自分そのものに対する自尊感情がないとなかなか難しいと思います。日本でなかなかディスカッションが機能しないのって、スキルセットの部分とマインドセットの部分があると思うんですけれど、まず来るのはマインドセットのところですよね。
慎  :そうですね。
松田 :マインドセットがあってこそ、いろいろ失敗をしながらスキルを磨いていけると思うんですが、そこがやっぱり日本は遅れていて。アメリカでは、みんないろいろあっていいんだよ、多様でいいんだよっていう文化が学校現場に落とし込まれていて、そうすると、子どもたちも、発言していいんだ、自分はちょっと外れた議論になっちゃうかもしれないけれども受け入れてもらえるんだ、って思える。
慎  :日本人には控えめな人が多いですよね。「自信ありますか?」って言うと、たぶん日本に住んでる人はどちらかというと、「ないです」って。でも、韓国人は、私の知ってる韓国人の人たちもけっこうアグレッシブなんで、「あります」って言っちゃうと思うんですけど。そういうのを差し引いても、やはり日本の子どもたちの自尊感情、自己肯定感っていうのは低いんですかね?
松田 :と思いますね。やっぱり根本にあるのは、自分という人間がどういう人間かというのを理解していて、それが、そこに対する確かなる自信というか、自尊心を持ってるってことはすごく重要だと。
慎  :さらに踏み込んで、なぜそのWhyの部分ていうのは人間じゃなきゃだめなのかっていうところについても聞いてみたいと思うんです。人のモチベーションは人から来そうだっていうのは、言われたらまあそうだろうなと思うんですけど、理屈としてはどういうことなんですかね?
松田 :うーん、理屈としてですよね...色々な考え方があってよいとは思いますが、松田悠介個人としてはあくまで人のパワーを信じていて、TFJも人が重要な要素だと思っているんですよね。それは、人が介在することによって自分も救われたということもあります。また、今、我々が学習支援をやっていて、放課後や週末に、大学生の教師たちが子どもたちの勉強を教えています。ここでも人がちゃんと表情を確認しながら、「あ、やればできるじゃん、すごいね!」って、人間味のある言葉をかけてあげることによる子どもの笑顔とか、一つずつの小さな成功体験が積み重なって生活保護を受けている子どもが高校に進学して道が開ける瞬間とか、そういうストーリーを一つずつ見ていると、ああ、人のパワーってすごくあるなって思います。
慎  :今の話を聞いてて感じたのは、人間って社会的な動物なので、お猿さんの時代から、自分が群れの中でどうやって見られてるのかみたいなものが、自己肯定感の一番根っこのところにあるんだと思うんです。だからなんですかね、たぶん人間に似せててもそれが同じ種族じゃなかったら、自己肯定感ってもしかしたらそこからは出てこないかな、という気はたしかにしてきましたね。



特定非営利活動法人Living in Peace(理事長:慎泰俊)は、
児童養護施設に暮らす子どもたちの養育環境の改善や進路支援を行っています。
http://www.living-in-peace.org/chancemaker/


慎 泰俊 Taejun Shin
1981年東京生まれ。
朝鮮大学政治経済学部法律学科卒、早稲田大学ファイナンス研究科修了。モルガン・スタンレー・キャピタルを経て、現在はPEファンドの投資プロフェッショナルとして様々な事業の分析・投資実行・投資先の経営に関与。
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