認定NPO Living in Peace代表の慎泰俊が今会いたい人と、これからの働き方・子どもの未来について語ります
第4回
2014年1月27日(月)
衆議院議員 細野 豪志さん × Living in Peace 代表 慎泰俊
【前編】NPOも政治も、大切なのは問題をいかに「自分事」として捉えてもらえるか
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児童養護施設の問題が、「票になりにくい」理由
慎  :細野さんは、政治家としていろんなアジェンダをお持ちだと思います。その中でも、おそらく児童養護施設の問題は、即効性という観点では、他のものに比べて見えにくいかもしれないと思うんです。細野さんからご覧になっていかがですか? 細野 :そうですね、このテーマはすごく時間軸が長いと思いますね。それと、一緒に議連をつくった岸本周平さんも言っていたことですけど、「票と金になりにくい」というのもよくわかります。政治家をもう十何年もやっていますと、どういうことをすればそれが票になるか、自分のところにお金が入ってくるか、というのが分かるようになるんですよ。私の場合、企業献金を受け取らないということでやってきたので、自分ではそれを判断基準にしないと考えてきたんだけれども、しかし、やはり票というものは無視できない。応援してもらえない限り続けられないし、政党も小さくなってしまうので。それを考えたときに、児童養護施設の問題は、一番政治家の目が届きにくいところだと思いました。

対談中の慎泰俊

慎  :やはりそうですか。 細野 :ただ逆に、だからこそ、そこに関わる意味があるかなと。私は今一番、何のために政治家になったのかとか、何をやるべきなのかということを、一回、票とお金ということを頭から外して考えるべき時期じゃないかなと思っていたんです。そのときに慎さんとの出会いがあったんです。

慎  :ああ、そうだったんですか。
細野 :それで、これはやってみようと。前に慎さんが書いておられた本で、「本能的にこれはやるべきだと思った」と書いておられたけれど、私もその感覚にかなり近いんですよね。

慎  :そうだったんですか、よかったです。児童養護施設の問題が票にならないというのを少し具体的に伺いたいと思います。まず、利害関係を持っている人たちの票が少ない、というのはありますよね。でも、いいことをしている人には投票しよう、という人もいそうな気がするのですが。
細野 :はい、そうですね。ただ、どうしても即物的になるというところがあるんです。例えば、高齢者の皆さんの年金や介護の問題でしっかり予算を確保します、と言えば、そのグループの人たちは安心しますよね。それと比べると、児童養護施設の問題というのは、票に直結しているということにはならないですよね。児童養護施設に預けているお父さんお母さんというのは、政治に直接関わっていない方や関心がない方が多いと思います。施設で働いている皆さんも、みんなお忙しですから、当然選挙運動なんてできないわけで、そういう期待はできません。あとは、世間一般に訴えかけたとしても、一般論としては大事なことだけれど、だからこの政党を応援しよう、この政治家を応援しよう、ということにはなりにくいということなんです。
慎  :そうですね。
細野 :ただ私は、今言ったことと矛盾するようなんだけど、もう一つ要素があるような気がしていて。それは、政治家が持っている使命感とか、迫力とか、そういうものは、にじみ出るようなところがあるでしょう。例えば、私が自民党の方で見ていてすごいなというのは、野中広務さん。野中さんはハンセン病の問題を一生懸命やっておられたし、被災地のがれきの処理などでもご一緒したんですけど、困った人がいたら見捨てておけない、というところが野中さんにはあるから、それがにじみ出て、有権者も引きつけられるという面はあるんです。それを忘れちゃいかんと思うんです。それが特定のテーマでの利害ではなくて、その政治家の持っている根底から出たものであれば、それは国民の皆さんが感じてくださると思うんですね。児童養護施設の問題は、私の中でいうと、その一つのテーマかなと思いました。
慎 泰俊 Taejun Shin
1981年東京生まれ。
朝鮮大学政治経済学部法律学科卒、早稲田大学ファイナンス研究科修了。モルガン・スタンレー・キャピタルを経て、現在はPEファンドの投資プロフェッショナルとして様々な事業の分析・投資実行・投資先の経営に関与。

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