衆議院議員 細野 豪志さん × Living in Peace 代表 慎泰俊
【前編】NPOも政治も、大切なのは問題をいかに「自分事」として捉えてもらえるか
細野 :あまり対外的には言っていなかったんですけど、ちょうど1年前に、私、子どもが生まれたんですが、実はだいぶ早く生まれてしまって、超低体重児だったんです。637gで生まれたんですが、結局亡くなってしまったんです。せっかく生まれてきてくれたのに生きることができなかった。ものすごく自分の中では大きな出来事だったんです。逆に、せっかく生まれてきたのに、虐待を受けて親が育てられないとか、もしくは、なんで自分が生まれてきたのかわからないというようなことを言う子どもがいるわけじゃないですか。それはものすごく悲しいことだし、やっぱりそこに目を向けるべきじゃないかなと思ったんですよね。
慎 :児童養護施設は、子どものときに、もしくは大人になってから、何か引っかかる体験があった人たちが、たくさん支援してくださっているという気がします。私自身はある程度幸せな家庭だったのですが、周りにそうではない家庭が多くて。生まれた環境でいろんなものが決まってしまっている子が、結構友達にいたんです。それがすごく腹立たしくて。施設に来たときにまず感じたのも、そういったことだったんです。
細野 :問題を自分のことと捉えられるかどうかですよね。個人的に関わるか関わらないかもそうだし、政治的な問題が動くか動かないかもそうだと思うんですよね。ですから、これから慎さんも、たぶんこのLiving in Peaceの活動も、私みたいに議員としてそれをなんとかいい方向に持っていこうという人間も全く同じだと思うんだけど、どうやってそれを国民の皆さんが“自分事”にしてくれるかなんですよね。
慎 :おっしゃるとおりですね。私、成育医療センターという子ども病院のお手伝いをしているんです。そこは、超重症児や小児がんにかかってしまった子ども、脳が麻痺して人工呼吸を付けているような子どものための事業をする場所です。こちらは、全ての親御さんが、「自分の子どももそうなるかもしれない」と思えるテーマなのでとても共感を得やすいんです。
細野 :なるほど。
対談中の細野さんと慎泰俊
慎 :一方で、児童養護施設の場合、話を聞いたときに、普通の親御さんは、大変だなとは思うけれど、「私はそんなことはしない」と思うと思うんですね。自分とはどうしても違う世界に感じがちで、“自分事”にはなりにくいんです。長い目で見ると、そういう社会の不安はみんなに返ってくるものなので、その視点では“自分事”ではあるんだけれど、“自分事”の濃さでいうと、それはやはり薄いと思います。寄付金集めをずっとしてきて感じる課題ですね。
細野 :その意味では、この筑波愛児園が、一般の方々にもできるだけ中を見てもらうということでやっておられることは、すごく大きいと思うんです。私もいくつかの施設を見学させてもらったけど、子どもと直に接する機会は少ないです。でも、この施設に来ると、子どもの顔も見れるし、彼らの頑張っている姿や悩んでる姿を見ることができるから、そうなるとほうっておけないし、一回来て楽しく過ごしておしまい、というわけにはいかないと、人間思いますからね。
慎 :おっしゃるとおりだと思います。児童養護施設の支援の場合、子どもと接することから“自分事”になるというのは大きいと思います。私自身もここで住み込みをさせていただいて、それでいろんな解決策を思いついて、支援を進めていくことができたので、こういうオープンな施設は本当に素晴らしいと思うんです。知られていない問題は世の中に認識もされないし、解決もされないわけですからね。