認定NPO Living in Peace代表の慎泰俊が今会いたい人と、これからの働き方・子どもの未来について語ります
第5回
2014年5月27日(火)
サヘル・ローズさん × Living in Peace 代表 慎泰俊
【前編】私を育ててくれた日本への恩返し 日本の子どもたちを守りたい
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子どもの可能性は大きい、1人1人の心のケアを
サヘル:子どもたちは、18歳までは施設にいられるけど、それを過ぎたら施設を出なきゃいけませんよね。そのとき施設としては、元の親がいるならなるべくそこに戻してあげたいと考えるでしょうし、また子どもも、兄弟がいるなら彼らを守りたいといって戻る子もいるだろうと思います。でも、本当は戻りたくないのに戻らないといけないと思う子もいるのではないかと思います。

慎泰俊

慎  :そうですね。あと僕がよく見るのは、高校を中退した子が、行くところがなくて家族のもとに戻らざるをえないケースです。もともとは親御さんが子どもと一緒に暮らせる状態ではなかったから、その子は施設にいたはずなのに、高校を中退して他に行くあてがないなら、じゃあ家族のところに行きましょう、と。なんというか、場当たり的な感は否めません。そのとき親御さんが完全に立ち直っていたらいいんですが、そうでないときは、子どもが追い詰められて結局、家出をしたりということが、よく起こるんです。 サヘル:すると、家庭を離れた子どものケアばかりを考えてしまいがちですけど、親御さんのケアがすごく大切なんですね。

慎  :おっしゃるとおりです。 サヘル:いっぽうで子どもたちの方も、いきなり施設を出て、1人で仕事して生きていくなんて、めったに出来ることではないですから、施設にいるときから子どもたちの心をケアする人が必要だと思います。 慎  :はい。でもそのあたりは弱いところです。児童養護施設では、40人から50人の子どもに1人の割合で心理担当の先生がいるのですが・・・。

サヘル:1人では無理ですよね。何とか出来ないでしょうか。この国の将来を担うのは今の若い子たちです。施設を出たということで違った目で見られることもあるかも知れませんが、道さえ作ってあげれば、頑張っていく子たちです。そこは他の子どもたちと変わらないんですよ、本当に。 慎  :そうなんです。子どもの可能性はいっぱいありますから、僕も心から応援したいと思っています。人間って植物みたいなもので、水をもらえないとちゃんと育たないし、太陽も必要だし、いい土も必要。私自身がこうして育つことができたのも、両親や多くの人のおかげです。そして全ての子どもたちが十分な家庭にいられれば良いのですが、そうならなかったときのために世の中があるはずなんです。だから、いま触れたような問題が起きているということは、世の中が家庭の代わりに提供している子どもが育つための環境がやっぱり不十分なんだと思うんですよね。


対談中のサヘルさん
サヘル:そうですね。 慎  :私も今は児童養護施設の養育環境を良くするための活動をしていますが、長期的には、むしろ里親が増えていったほうがといいと考えています。でも、里親が増えるには時間がかかりますし、現時点で施設に暮らしている3万人の子どもたちの生活がありますから、まずはそれを良いものにしていきたいなと思っています。
慎 泰俊 Taejun Shin
1981年東京生まれ。
朝鮮大学政治経済学部法律学科卒、早稲田大学ファイナンス研究科修了。モルガン・スタンレー・キャピタルを経て、現在はPEファンドの投資プロフェッショナルとして様々な事業の分析・投資実行・投資先の経営に関与。

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