【前編】私を育ててくれた日本への恩返し 日本の子どもたちを守りたい
慎泰俊
慎 :そうですね。あと僕がよく見るのは、高校を中退した子が、行くところがなくて家族のもとに戻らざるをえないケースです。もともとは親御さんが子どもと一緒に暮らせる状態ではなかったから、その子は施設にいたはずなのに、高校を中退して他に行くあてがないなら、じゃあ家族のところに行きましょう、と。なんというか、場当たり的な感は否めません。そのとき親御さんが完全に立ち直っていたらいいんですが、そうでないときは、子どもが追い詰められて結局、家出をしたりということが、よく起こるんです。 サヘル:すると、家庭を離れた子どものケアばかりを考えてしまいがちですけど、親御さんのケアがすごく大切なんですね。
サヘル:1人では無理ですよね。何とか出来ないでしょうか。この国の将来を担うのは今の若い子たちです。施設を出たということで違った目で見られることもあるかも知れませんが、道さえ作ってあげれば、頑張っていく子たちです。そこは他の子どもたちと変わらないんですよ、本当に。 慎 :そうなんです。子どもの可能性はいっぱいありますから、僕も心から応援したいと思っています。人間って植物みたいなもので、水をもらえないとちゃんと育たないし、太陽も必要だし、いい土も必要。私自身がこうして育つことができたのも、両親や多くの人のおかげです。そして全ての子どもたちが十分な家庭にいられれば良いのですが、そうならなかったときのために世の中があるはずなんです。だから、いま触れたような問題が起きているということは、世の中が家庭の代わりに提供している子どもが育つための環境がやっぱり不十分なんだと思うんですよね。
対談中のサヘルさん