認定NPO Living in Peace代表の慎泰俊が今会いたい人と、これからの働き方・子どもの未来について語ります
第1回
2013年8月10日(土)
Teach For Japan代表 松田 悠介 × Living in Peace 代表 慎泰俊
【後編】リーダーシップとは信頼関係を作ること 真のリーダーが生まれる教育の現場
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相手のニーズを知らなければ、関係性を築けない
松田 :我々の相手だと、まずは教育委員会です。最初はすごく大変でした。昨年の夏だけで、私70の教育委員会を回りました。中には、若い職員さんが出てきて、聞いて流してはいお帰りくださいというのが何件か続いたこともありました。

慎  :大変ですね。それをどう乗り越えたのですか。 松田 :最初は、僕らがやりたいことがこれなんです、やってください、やりましょう、というアプローチだったのが、全部はね返されたと。そこで、教育委員会のニーズが本当に何なのかというのを徹底して調べてですね、僕らがそういったところでお手伝いしに来てるんですよっていったところをすごく真摯に見せていくことにした。これは、すごく重要なターニングポイントだったんだろうなと。 慎  :なるほど。

松田 :もう一つは、よく思想は素晴らしいんだけれども、実際に何ができるのかが見えないと言われることがあった。なので、実際にやってみせるのも効果的です。例えば、今とある自治体では、市長、教育長、教育委員会の事務局全て巻き込んでプログラムができていて、すごくいい関係を築けているんですけれど、その前に学生教師による学習支援事業をそこでやっているんですね。本当に荒れた中学で、生活や学習態度に非常に深刻な問題行動が、みられる子どもたちと向き合って、我々の学生教師は逃げないんです。授業始まって5分ぐらいすると集中力が切れて教室を飛び出す生徒もいますが、それを追っかけて行って一緒に座って話を聞いて、あとは一緒にサッカーしたりして、信頼関係築いて。そうすると、勉強するようになるんですね、エンジンが回り始めるんですよね。それを教育委員会の方々や現場の先生に見てもらうと、なんか実際できそうじゃん、となります。
慎  :それはすごく勉強になりますね。私たちも児童養護施設の支援では、やっぱりあっちの立場に立ってご意見伺うとか本当に重要なことだと思っていて。けっこう、社会変革系の人たちって自分たちが正義だと思って、お前たちが間違ってるから入りたがるんですよね。まあそれするとうまくいかないですよね、炎上もするし。
松田 :そうですよね。
慎  :ちょっと趣向が変わって、ティーチフォーアメリカ(以下、「TFA」)についてお聞きしたいのですが、TFAのブランドっていうんですかね、これはフランチャイズっていうのか、何て言うのかわかんないんですけれど。
松田 :まあネットワークに一緒にいるっていう感じですね。
慎  :松田さんは米国の大学院留学中にTFAを知って、日本での適用可能性についての修士論文を書かれたんですよね?自分で学習塾とかでするんじゃなくて、TFJにした理由っていうのは何だったんですか?
松田 :私は教育に革新をし続けていきたいので、そのためのありとあらゆる手段を取ってかなきゃいけないと思ってるんです。それはもうブランディングの面においても、連携する人もし、モノでありお金もそうだと思うんですけれど、ありとあらゆる手段を講じて、一番最短の道で、その社会を、世界観を実現していきたいと思っています。
慎  :はい。
松田 :その上で、TFAの文脈の中でやるのと松田教師養成塾という文脈でやるのだと、起こりうる社会的なインパクトが、やってくことが一緒であってもですね、全然違うと思うんですね。同じいいものであっても、どう見せるのかというのはすごく重要な観点だと思っています。
慎  :そういう見せ方って実際にやっぱり役立ちます?外資系の金融機関とかだと、はるかにウケがよさそうな気がしますけれど。
松田 :メディアの食いつきなんていうのも、おそらくそのアメリカの文脈があったからこそ、ああ興味深い、日本でも始まるんだ、ということで取り上げていただけましたし、そこは事実としてあるので、うまく活用していきたいと思っています。
慎 泰俊 Taejun Shin
1981年東京生まれ。
朝鮮大学政治経済学部法律学科卒、早稲田大学ファイナンス研究科修了。モルガン・スタンレー・キャピタルを経て、現在はPEファンドの投資プロフェッショナルとして様々な事業の分析・投資実行・投資先の経営に関与。
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